(論文紹介)Editorial: Forest carbon credits as a nature-based solution to climate change? (2/n)

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(論文紹介)Editorial: Forest carbon credits as a nature-based solution to climate change? (2/n)

株式会社sustainacraftのNewsletter(個別編)です。

前回に引き続き、森林カーボンクレジットに関して2023年8月に発行されたエディトリアルEditorial: Forest carbon credits as a nature-based solution to climate change?)の中から論文をピックアップして紹介します。

今回の記事では、森林プロジェクトの投資リスクや永続性に関連する以下の2つの論文を取り上げます。どちらも数値シミュレーションに基づいて示唆を得るタイプの研究であり、現実のプロジェクトの評価ではありませんが、今後国・準国レベルでのREDD+を議論する際の一つの材料となるかもしれません。

(1) McCallister et al. (2022): Forest protection and permanence of reduced emissions

(2) Chan et al. (2023): Performance insurance for jurisdictional REDD+: Unlocking finance and increasing ambition in large-scale carbon crediting systems


(1) McCallister et al. (2022): Forest protection and permanence of reduced emissions

(link)

REDD+プロジェクトが批判される際の論点の一つに永続性(Permanence)があります。違法伐採や、火災を始めとした自然災害が多く起こるなかで、本当に森林保護の効果が複数世代に渡って続くのかという点は多くの議論を呼んでいます。

本論文では、国レベルでの森林保護政策の効果の時間変化をシミュレーションベースで分析しています。結果として、森林減少のトレンドには経路依存性があり、一度森林減少のトレンドを抑える有効な政策を打てば、仮にその後揺り戻しがあっても元の水準にはなかなか戻らない可能性があることを示しています。

モデルの設定

過去の森林減少の推移を学習するために、ここではセル・オートマトンと呼ばれるモデルを用います。これは空間を格子状に区切り、各格子の状態が周囲と相互作用しながら時間的に変化してゆく様子を表現するモデルです。森林減少の空間依存性、つまりある地点で起きた森林減少が周囲の森林減少確率に与える状況を考慮にいれることができます。データの概要は以下です:

  • ブラジルのマットグロッソ州の森林減少のデータ (2001-2016)

    • 1km x 1kmのグリッド

    • 環境省 (Secretary of Environment)が公開

  • 道路、保護区、標高、土壌など複数の共変量を利用 (合計10変数)

  • 災害など突発的な森林減少の影響は乱数を使うことで考慮

マットグロッソの場所
モデルにおける共変量と時系列データの反映の仕方

モデルの出力は、各グリッドにおいて次期に森林減少が起きる確率です。ここから森林/非森林のマップを得るには、何かしらの閾値を設定し、それを超えたら非森林に分類する処理を行います。

政策変更のモデルへの反映は、この閾値を変更することにより行います。例えば森林伐採規制を強めて全体的に森林減少が起きにくくなったことをシミュレートする場合は、閾値を大きめに設定することで、非森林と判定されるピクセルの数が少なくなるようにします。

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