2024年9月 Methodology Updates (1/n)

SD VISta Nature Frameworkのパイロットプロジェクトからの学び

2024年9月 Methodology Updates (1/n)

株式会社sustainacraftのニュースレターです。

Methodology Updatesは、炭素・生物多様性クレジットの方法論を扱うシリーズです。本記事ではVerraの生物多様性クレジット方法論であるSD VISta Nature Frameworkに関するアップデートを紹介します。

弊社の過去のニュースレターでも何度か紹介していますが (参考1参考2参考3)、昨年から今年にかけて、生物多様性クレジットの方法論の開発が進んできています。特に活発なのが今回紹介するVerraのNature FrameworkとPlan VivoのPV Natureです。Plan Vivoはプロジェクト活動による生物多様性の純増分のみをクレジットの対象としていますが、Nature FrameworkはREDD+の方法論の開発で培った経験が反映されており、回避された損失もクレジットの対象としているという特徴があります。これ以外にも色々と考え方の違いがありますので、詳しくは上のリンク先の記事をご参照下さい。

Nature Frameworkについては、昨年にドラフト(v0.1)が公開されて以降、パブリックコンサルテーションやパイロットプロジェクトが実施されており、今年の5月にその結果のサマリーが出ました。先月に発行されたSD VIStaのニュースレターでは、関連する情報がまとめられています。

今回はそれらの中でも、パイロットプロジェクトを通じて見えてきた課題をご紹介します1。Verraは多くの課題について対応の必要性は認識しているものの、具体的な対策は明確にしていません。生物多様性プロジェクトは、カーボンプロジェクトと比較してまだ歴史が浅いというのもありますが、それ以上に、定量化の難しさやプロジェクト設計の難しさが再認識された結果となっているように思います。

お問い合わせはこちらまでお願いたします。


Nature Frameworkのパイロットからの学び (Verra)

(出所: Verra SD VIStaニュースレター2024年8月分, 2024年9月24日アクセス)

VerraのNature Frameworkは、生物多様性に対するポジティブな活動の成果をクレジット化するための方法論であり、Sustainable Development Verified Impact Standard (SD VISta)プログラムの中に位置付けられています。Verified Carbon Standard (VCS)と比較すると、SDVIStaは、ジェンダー平等、経済発展、安価なクリーンエネルギー、野生動物の保護など、社会的および環境的プロジェクトから得られる便益を認証するのに特化したスタンダードです。Nature Frameworkのドラフトにおける生物多様性の定量化の方法については、以下のニュースレターで詳しく紹介しました。

SD VISta Nature Frameworkパブリックコンサルテーションの開始
株式会社sustainacraftのNewsletter(個別編)です。

上記で紹介したパブリック・コンサルテーションと、パイロットプロジェクトからのフィードバックをまとめた結果が今年の5月に発表されました。パブリック・コンサルテーションでは、10のパイロットプロジェクトの代表者、42の一般回答、そして67人の先住民および地域コミュニティへのコンサルテーションイベントからの集められた意見が集約されています。現在、これらのフィードバックに基づき方法論のアップデートが行われており、2024年内に正式版が公開予定となっています。

本ニュースレターでは、主にパイロットプロジェクトからのフィードバックに焦点を当て、ドラフトの方法論を実際に使う中で特定された具体的な問題点と改善の方向性の議論を紹介します (パイロットプロジェクト以外にも、パブリックコメントやおよび先住民や地域コミュニティのコンサルテーションイベントで提供されたフィードバックにも興味深い点が多数ありますが、情報が多岐にわたるため、本記事では省略します。この点については、こちらもご覧下さい)

詳しい紹介に入る前に、パイロットにどんなプロジェクトが含まれていたか見てみましょう。今回のパイロットでは、活動の種類(例:保全や回復)、地理的地域、生物群系、プロジェクト規模、土地利用(例:保護区、林業、農業、観光、漁業)、および先住民や地域コミュニティの関与に関して様々なタイプが含まれるよう考慮しつつ、179の候補から31のパイロットプロジェクトが選ばれました。以下の図を見ると分かる通り、地理的に最も多いのはアフリカでした。またプロジェクトタイプとしては陸域の森林で行われたプロジェクトが多かったようです。活動内容は回復と損失回避の両方を含むプロジェクトが半数以上を占めています。参加プロジェクトは、開始時のウェビナーへの参加、PDDのドラフトの提出、Verraとのビデオ会議への参加 (PDDの内容の議論、プロジェクトに関する情報の共有、SD VIStaおよびNature Frameworkのルールや要件に関するフィードバックを提供)することが求められました。

パイロットプロジェクトの特性 (サマリー文書より)

これらのパイロットプロジェクトからフィードバックは多岐に渡ったようですが、以下では、それら中でも特に洞察に富んだフィードバックが寄せられた5つのトピック、1. ベネフィット・シェアリング、2. Condition indicator、3. モニタリングの課題、4. 基準値の定量化、5. Nature Frameworkの価値について紹介します。

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ウェビナー GX/ETSに向けた炭素クレジット 最新動向 解説セミナー COP30やGX/ETS制度設計、そのほか関連イニシアティブを踏まえた最新動向 参加登録する 概要 2025年11月にブラジルで開催されたCOP30も含め、パリ協定第6条(国際炭素市場メカニズム)やJCM(二国間クレジット制度)を取り巻く環境は大きく動いています。 また、日本国内でもGX-ETS(排出量取引制度)の本格稼働に向けた制度設計が進んでおり、炭素クレジットの活用戦略は企業にとって重要な経営課題となっています。 本セミナーでは、環境省JCM推進室より髙橋室長補佐をお招きし、COP30の成果やパリ協定第6条関連の最新動向、JCMの進捗状況について解説いただきます。 また、サステナクラフトからは、JCMでのクレジット供給が期待されている中で、各国での6条関連の動きも踏まえた各国のJCMポテンシャルやボトルネックの分析についてお話しします。 加えて、SBTiの新たな企業ネットゼロ基準(Version 2)の2回目のパブコメの内容などもお伝えしたいと思います。

By sustainacraft