2024年8月 VCM Updates: Section A

VCM Updates Section A: Voluntary Carbon Creditの市場動向

2024年8月 VCM Updates: Section A

株式会社sustainacraftのニュースレターです。本記事はVCM Updates(ボランタリーカーボンマーケットのアップデート)のセクションA(市場動向編)です。


本題に入る前にお知らせです。

SBTi(Science Based Targetsイニシアティブ)が7/30に幾つかのレポートを出しました。「EAC(環境属性証書)の有効性調査結果」と、「Scope 3の目標設定、及び、その中でのEACの利用に関するディスカッションペーパー」です。この内容を説明するセミナーを実施します。

  • タイトル: 【速報】SBTi 7/30公開アナウンスを徹底解説!
  • 日時: 2024年 8月 27日(火)13:30-15:30(最大2時間)
  • 場所: オンライン
  • 登録URL: こちら

これまでの「オフセット」や「BVCM」、「除去クレジットでの中和」を前提としたカーボンクレジットの調達を検討されている方だけでなく、バリューチェーン内部での排出削減に向けた「インセット」や低炭素材料の調達など「コモディティ証書」の利用をSBTやGHGプロトコルのもとでどう利用していくかを検討されている方もぜひご参加ください。

また、SBTはその名の通り「科学に基づく」、とされていますが、科学とは関係なく「設計上の選択」をしている部分も多くあります。その辺りの議論もいくつか紹介したいと思います。


ここからが本題です。

本ニュースレターでは、先月(2024年7月)のクレジット償却企業のユースケースとして、Bayer、PetroChina、GrabCar(シンガポールを拠点とするライドシェアなど提供するテック企業)、Mirvac(オーストラリアの不動産開発業者)の4社を紹介します。Mirvacはインフラの開発中に使用される材料(コンクリート、鋼鉄、アルミニウムなど)として、Scope 3のGHG削減を再生材料や低炭素コンクリートの調達により進めようとしています。これを主張するには、コモディティ証書を利用することが想定されますが、SBTやGHGプロトコルのもとで算定するには、ある一定水準のトレーサビリティが求められます(これも先日のSBTからのScope 3ディスカッションペーパーで議論されている一つの重要な論点です。上述のセミナーにてこのトピックも扱います)。

プロジェクトパイプラインの分析としては、パナマおよびコスタリカのALM(農地管理案件)案件を紹介します。自然由来の新規案件として、REDD+が大規模な方法論の移行に伴い発行量が減少している中、規模の大きいものとしてALM案件が上位に位置することが最近は多く見受けられます。この2件は、rePLANETが提案者になっています。本提案者は、生物多様性クレジットの創出案件を進めていることでも有名ですが、今回の案件では、生物多様性クレジットの方法論をもとに生物多様性ゲインをモニタリングされることが想定されています。この案件ではVerraの生物多様性クレジットの枠組みであるNature Framework(SD Vistaの一部)ではなく、Wallacea Trustに沿って定量化することが計画されています。

お問い合わせはこちらまでお願いたします。

(2024/9/25 rePLANETの案件について一部修正しました。)


«VCM Updatesの構成»

A. Voluntary Carbon Creditの市場動向 ← 本記事の対象

  1. クレジット発行・償却分析
  2. プロジェクトパイプライン分析

B. 海外の主要規制の動向


A. Voluntary Carbon Creditの市場動向 (Verra)

A-1: クレジット発行・償却動向

- 分析対象レジストリー: Verra、GS(Gold Standard)、CAR(Climate Action Reserve)、ACR(American Carbon Registry) 
- 対象期間: 2024年7月
- 留意事項: 償却した企業について、レジストリーに対して実名での登録は義務付けらておらず、正確性は保証できない旨ご了承ください。また、レジストリーへの反映には遅れがありますので、今後も本対象期間中について案件の増減やステータス変更の可能性があることにご留意ください。

本対象期間の発行・償却実績は以下のとおりです(括弧内は前年同月比)。

  • 発行実績: 21.37百万(+28%)、うち自然由来 7.17百万(+300%)
  • 償却実績: 8.65百万(-19%)、うち自然由来 2.63百万(-32%)

<発行された案件リスト>

以下は、本対象期間にクレジットが発行されたプロジェクトの上位10件です。このうち3件はIFM(ACR/CARレジストリ)のもので、約510万ユニットのクレジットが発行されています。

上位10件のプロジェクト、タイプ: All

<償却された案件リスト>

本対象期間に償却された自然由来プロジェクトの一覧は以下の通りです。

上位10件のプロジェクト、タイプ: Nature-based

<償却企業リスト>

本対象期間で自然由来案件のクレジットを償却した上位10社は以下の通りです。本ニュースレターでは、Bayer、PetroChina、GrabCar、Mirvacの4社を紹介します。Bayerは4月のニュースレターでも紹介しました。

上位10件のアカウント、タイプ:Nature-based

企業ケーススタディ

Bayerについて

先月、BayerはVCS-961プロジェクトEl Arrieroから220,000ユニットのクレジットを償却しました。このプロジェクトの方法論はAR-ACM0001で、現在は非アクティブとなり、AR-ACM0003に置き換えられています。この変更については、5月のMethodology Updateニュースレターで記載しています。

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GX/ETSに向けた炭素クレジット
最新動向 解説セミナー ~COP30やGX/ETS制度設計、そのほか関連イニシアティブを踏まえた最新動向~

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ウェビナー GX/ETSに向けた炭素クレジット 最新動向 解説セミナー COP30やGX/ETS制度設計、そのほか関連イニシアティブを踏まえた最新動向 参加登録する 概要 2025年11月にブラジルで開催されたCOP30も含め、パリ協定第6条(国際炭素市場メカニズム)やJCM(二国間クレジット制度)を取り巻く環境は大きく動いています。 また、日本国内でもGX-ETS(排出量取引制度)の本格稼働に向けた制度設計が進んでおり、炭素クレジットの活用戦略は企業にとって重要な経営課題となっています。 本セミナーでは、環境省JCM推進室より髙橋室長補佐をお招きし、COP30の成果やパリ協定第6条関連の最新動向、JCMの進捗状況について解説いただきます。 また、サステナクラフトからは、JCMでのクレジット供給が期待されている中で、各国での6条関連の動きも踏まえた各国のJCMポテンシャルやボトルネックの分析についてお話しします。 加えて、SBTiの新たな企業ネットゼロ基準(Version 2)の2回目のパブコメの内容などもお伝えしたいと思います。

By sustainacraft