2024年5月 VCM Updates: Section A

VCM Updates Section A:Voluntary Carbon Creditの市場動向

2024年5月 VCM Updates: Section A

株式会社sustainacraftのニュースレターです。

本記事はボランタリーカーボンクレジットの市場動向を扱います(今月から、これまで1つの記事で出していたVCM UpdatesをSection AとBに分けて公開します)。

2024年4月も引き続き自然系クレジット案件の発行量は多くありません。本記事では、4月の償却量の大きい企業の中から、Civitas Resources(米国の石油・ガス会社)、City of Logan(オーストラリアの自治体)、Boston Consulting Group(コンサルティング会社)、Chiesi Group (イタリアの製薬会社)をケーススタディとして紹介します。

また、プロジェクト軸では、インドネシアのRimba Raya案件が最も多く償却されました。Rimba Raya案件は最大規模のREDD+案件の1つで、これまでに33百万トンものクレジットが発行されてきました。多くの日系企業も調達・償却してきた案件ですが、インドネシア政府が最近、リンバ・ラヤのライセンスを取り消したことで業界では騒然となっています。これについてはSection Bで取り上げます。

お問い合わせはこちらまでお願いたします。


«VCM Updatesの構成»

A. Voluntary Carbon Creditの市場動向 ← 本記事の対象

  1. クレジット発行・償却分析
  2. プロジェクトパイプライン分析

B. 海外の主要規制の動向


A. Voluntary Carbon Creditの市場動向 (Verra)

A-1: クレジット発行・償却動向

2024年4月はVerra、GS(Gold Standard)、CAR(Climate Action Reserve)、ACR(American Carbon Registry) のレジストリーにおけるボランタリーカーボンクレジットは25.46百万ユニットが新たに発行され、14.17百万ユニットが償却されました。それぞれ前年同月比+7%、+1%となっています。

AFOLU(Agriculture Forestry and Other Land Use)プロジェクトに限ると3.93百万ユニットが発行され、2.98百万ユニットが償却されています。それぞれ前年同月比-75%、-13%となっています。

2024年4月に償却されたVerraのプロジェクトの一覧(AFOLUセクターのみ)は以下の通りです。上位20件のプロジェクトで償却全体の約86%を占めています。最初の2つのプロジェクト(Rimba Raya および Katingan)はどちらもインドネシアのREDD+案件で、償却全体の18%を占めています。

Top 20 projects (project type: AFOLU)

2024年4月の償却した企業のTOP 20社は以下の通りです。今回はVCS以外、AFOLU以外の案件も含めたリストを表示しています。

Top 20 accounts (project type: All)

償却数の多い最初の2社は、Civitas Resources(CAR、ACR、VCSから99.81万ユニット)とBoeing(GS、ACR、VCRから44.98万ユニット)でした。3社目はBoston Consulting Group(VCSのみ、クレジットはすべてAFOLUのプロジェクトからのものであるため、Boston Consulting GroupについてはニュースレターのAFOLUのセクションで分析されています)。次に、City of Logan(GS、VCS)が続けています。これらの4つのアカウントは、2024年4月の償却全体の約27%を占めています。


企業ケーススタディ

Civitas Resourcesによる償却

Civitas Resourcesは、アメリカの石油・ガス会社で、「コロラド州で初のカーボンニュートラルなエネルギー生産者」と自称しています。Civitasの2023年のサステナビリティレポートによると、2021年に5つの別々の石油・ガス会社から設立されて以来、カーボンニュートラルを維持しています。同社はまず排出量を削減し、残りのScope 1+2排出量を毎年相殺することで、カーボンニュートラルを維持することを目指しています。(Source, 13ページ)

サステナビリティレポートには、Scope 3排出量に対するアプローチについての言及がありません。Scope 3排出とは、この場合、車両や産業活動による製品の燃焼から生じるものです。地元新聞はこれを強く批判し、Scope 3排出量はCivitasの総排出量の85%を占めるため、Civitasの目標は「ほぼ無意味である」と指摘しています(Source)。同新聞は、コロラド州での急速な拡大を考慮すると、Civitasのサステナビリティーに関する主張が妥当であるかを疑問視しています。

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ウェビナー GX/ETSに向けた炭素クレジット 最新動向 解説セミナー COP30やGX/ETS制度設計、そのほか関連イニシアティブを踏まえた最新動向 参加登録する 概要 2025年11月にブラジルで開催されたCOP30も含め、パリ協定第6条(国際炭素市場メカニズム)やJCM(二国間クレジット制度)を取り巻く環境は大きく動いています。 また、日本国内でもGX-ETS(排出量取引制度)の本格稼働に向けた制度設計が進んでおり、炭素クレジットの活用戦略は企業にとって重要な経営課題となっています。 本セミナーでは、環境省JCM推進室より髙橋室長補佐をお招きし、COP30の成果やパリ協定第6条関連の最新動向、JCMの進捗状況について解説いただきます。 また、サステナクラフトからは、JCMでのクレジット供給が期待されている中で、各国での6条関連の動きも踏まえた各国のJCMポテンシャルやボトルネックの分析についてお話しします。 加えて、SBTiの新たな企業ネットゼロ基準(Version 2)の2回目のパブコメの内容などもお伝えしたいと思います。

By sustainacraft