2024年11月 VCM Updates: Section B (2/n)

海外の主要規制の動向編: 主要なカーボンスタンダードのCORSIAフェーズ1での使用承認、ICVCMによる3つのREDD+方法論のCCP認定

2024年11月 VCM Updates: Section B (2/n)

株式会社sustainacraftのニュースレターです。本記事はVCM Updates(ボランタリーカーボンマーケットのアップデート)のセクションB(海外の主要規制の動向編)です。


気候変動特集 at NHKスペシャル: 11/30 (土) 22時~ (link)

リンクの通り、NHKスペシャルで気候変動特集が放映されるようです。もしかしたら当社も扱われるかもしれません。


本記事では、以下のトピックを扱います。

  • CORSIAフェーズ1: Gold StandardやVerra等の主要なカーボンスタンダードの使用を承認
  • ICVCM: 3つのREDD+方法論をCCP認定

先日、Gold StandardやVerraのVCSといった主要なカーボンスタンダードのCORSIAフェーズ1での使用が承認されたとの報道がありました。この報道を受け、今回はCORSIAの概要、使用が承認されたカーボンスタンダード、今後の需給見通しについて解説します。

またICVCMから、3つのREDD+の方法論をCCP認定したと発表がありましたので、ICVCMとCCPの概要をおさらいした上で、今回承認された方法論とREDD+プロジェクトに関して今後想定される動きについて解説します。

なお、これらの動きは、REDD+プロジェクトへのファイナンスに対して追い風になると考えています。多くの企業がSBTを拠り所にする中で、炭素クレジット需要は吸収系にシフトしつつあり、REDD+に対するクレジット需要は不透明な状況が続いています。しかし、気候変動への効果という意味では回避系も吸収系も同様です(これについては、こちらの記事もご参照ください。REDD+を含むこれまでの炭素クレジット過剰発行の問題については、今月のレビュー論文紹介記事でも扱っています)。

本記事で説明する、REDD+方法論がCCP認定になったこと、及び、まだ方法論レベルでの詳細は未確定なものの、VerraもCORSIA Phase1適格になったことで、REDD+へのファイナンスが活発になることを期待しています。


CORSIA: Gold StandardやVerra等の主要なカーボンスタンダードの使用を承認

出所: Carbon Herald (2024.11.1)Gold Standardの発表(2024.10.30)Verraの発表(2024.10.30)CARの発表(2024.11ニュースレター)GCCの発表(2024.10.30)

«そもそもCORSIAとは何か、航空会社には何が求められているのか?»

最近ニュースレターの購読を開始いただいた方もいらっしゃいますので、まずCORSIAとは何か、航空会社はどのような義務を負っているのかについて簡単に触れたいと思います。

CORSIA(Carbon Offsetting and Reduction Scheme for International Aviation: 国際航空用炭素オフセット及び削減スキーム)とは、ICAO(International Civil Aviation Organization: 国際民間航空機関)が推進する取り組みで、国際的な航空業界における二酸化炭素排出量の削減とカーボンオフセットを目的としています。この取り組みは、航空会社が環境に配慮した運航を行うために、CO2排出量を削減し、その分をカーボンオフセットとして購入することを求めています。

具体的には、参加国の航空会社は、CO2排出量のモニタリングと報告をする必要があり、それがベースライン(2019年の活動レベル比で85%に設定)を上回る場合は、承認されたクレジットを購入する必要があります。

«CORSIAのフェーズと、適格クレジット»

このCORSIAは、3つのフェーズに分かれています。

  • パイロットフェーズ (2021-2023)
  • フェーズ1 (2024-2026)
  • フェーズ2 (2027-2035)

パイロットフェーズとフェーズ1においてはCORSIAへの参加はボランタリーですが、参加国は着実に増えており、2021年には88カ国(日本を含む)であったのが2024年9月には129カ国となっています(出所: ICAO CORSIA News)。そしてフェーズ2においては、ICAO加盟国(193カ国)のほとんどの航空会社は参加を義務付けられます。

このフェーズごとに、使用が認められるクレジットスタンダードが審査されることになっており、パイロットフェーズでは以下のスタンダードの使用が承認されていました。(出所:ICAO

  • American Carbon Registry (ACR)
  • Architecture for REDD+ Transactions (ART)
  • BioCarbon Fund for Sustanable Forest Landscapes (ISFL)
  • China GHG Voluntary Emission Reduction Program
  • Clean Development Mechanism (CDM)
  • Climate Action Reserve (CAR)
  • Forest Carbon Partnership Facility (FCPF)
  • Global Carbon Council (GCC)
  • The Gold Standard (GS)
  • SOCIALCARBON
  • Verified Carbon Standard (VCS)

また、今回の発表までは、フェーズ1では、以下の2つのみが承認されていました。(出所:ICAO

  • American Carbon Registry (ACR)
  • Architecture for REDD+ Transactions (ART)

現在のところ、フェーズ1において発行されたクレジットはARTのガイアナにおける案件による714万ユニットのみに留まっています。

«今回、CORSIAフェーズ1で追加的に承認されたカーボンスタンダード»

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ウェビナー GX/ETSに向けた炭素クレジット 最新動向 解説セミナー COP30やGX/ETS制度設計、そのほか関連イニシアティブを踏まえた最新動向 参加登録する 概要 2025年11月にブラジルで開催されたCOP30も含め、パリ協定第6条(国際炭素市場メカニズム)やJCM(二国間クレジット制度)を取り巻く環境は大きく動いています。 また、日本国内でもGX-ETS(排出量取引制度)の本格稼働に向けた制度設計が進んでおり、炭素クレジットの活用戦略は企業にとって重要な経営課題となっています。 本セミナーでは、環境省JCM推進室より髙橋室長補佐をお招きし、COP30の成果やパリ協定第6条関連の最新動向、JCMの進捗状況について解説いただきます。 また、サステナクラフトからは、JCMでのクレジット供給が期待されている中で、各国での6条関連の動きも踏まえた各国のJCMポテンシャルやボトルネックの分析についてお話しします。 加えて、SBTiの新たな企業ネットゼロ基準(Version 2)の2回目のパブコメの内容などもお伝えしたいと思います。

By sustainacraft